小5から中学受験の勉強をはじめて、私立中高一貫の女子校に進学。
親子の印象は、親がグイグイ引っ張り、子どもは無自覚についていく中学受験母娘のイメージど真ん中。(実際は、少し違いましたが…。)
フルタイムで仕事をしながら、受験のサポートもしっかりするパワフルなお母さんの下、素直?で真面目?な娘が、早稲田大学商学部に進学を決めるまでを紹介します。
高校3年3月段階での生徒情報
1.高校:共立女子
2.部活:卓球
3.検定:英検2級
4.大学入試共通テスト同日模試結果
科目 | 点数 |
英語 | 138 |
国語 | 136 |
世界史 | 56 |
合格校
大学 | 学部 | 偏差値 |
早稲田 | 商学部 | 67.5 |
早稲田 | 教育学部 | 65.0 |
早稲田 | 人間科学部 | 65.0 |
中央 | 法学部 | 65.0 |
明治 | 政治経済学部 | 62.5 |
立教 | 社会学部 | 62.5 |
法政 | 人間環境学部 | 60.0 |
東洋 | 国際学部 | 55.0 |
参照:パスナビhttps://passnavi.obunsha.co.jp/
塾選びのきっかけ
・一人一人に合った計画で進めていけるから、計画的に進めるのが苦手な自分に合っているなと思った。
・勉強しようと思っても何をすればいいか分からないことに悩んでいたので、相談しながら勉強計画を立ててくれる点に惹かれました。
早稲田大学商学部合格MSさんアンケートより抜粋
経過
初回面談
まず、志望校を聞くと
大学 | 学部 |
早稲田大学 | 社会学部 |
早稲田大学 | 文化構想学部 |
明治大学 | 政治経済学部 |
立教大学 | 社会学部 |
青山学院 | 経済学部 |
中央大学 | 法学部 |
他にもいくつか名前は挙がっていましたが、上記が主な希望の大学でした。
志望理由を聞くと、
・将来は、財務専門官という公務員になりたい。
・都市計画などの社会学の分野に興味がある。
・箱根駅伝が好きだから、箱根に出場している大学がいい。
各大学の志望理由は、将来のキャリア形成に役立ち、さらに自分の興味にも合致する勉強ができるからとのことでした。
進学する理由もなく「MARCHに行きたい‼」という高校生が多い中、目標からの逆算と自分の勉強したい内容を、しっかり考えて志望校を決めている高校生がいることに驚きました。
高校の進路指導も、学校の進学実績よりも本人のやりたいことが大切だから、大学名にはこだわらないという方針らしく、私立でもそういう高校があるのかと感銘を受けました。
困っていることを本人から聞くと、
・計画性がなく、たとえば試験勉強では思いついた科目を勉強してしまう。
・普段の勉強時間はほぼゼロで、テスト中でも3時間くらいしか勉強できない。
小学校時代、親の徹底的管理の下で中学受験をやらされて、入学後に親の管理が離れたら一気に勉強しなくなった系の子かと思いました。
ところが、共通テスト同日模試と学校の成績表を見ると、思いのほか良くてびっくりしました。
とくに学校の成績は、非常に高く平均評定4.9。
共通テスト同日模試も高2時点で受験したと考えると、それほど悪い結果ではありませんでした。
学校の成績は良いので、瞬発力はいいものがありそうだと感じました。
けれども模試の内訳をみると、リスニング・古文・漢文に比べて、現代文とリーディングの得点が低いので、瞬発力だけに頼って地力を鍛えることを怠ってきたことがわかる試験結果でした。
土台が弱いのに、成績がいい学生の共通点として
・早期に成績を上げられそうな部分は、ある程度完成している。
・過去の成功体験から、求められる能力がちがうのに、自分のスタイルを変えない。
・指摘すると、不貞腐れて余計にいうことを聞かない。
上記のような特徴を持つ生徒が多く、伸び悩むことが多いです。
しかし、
この2点から、
・満足度100点の入試はできなくても、80点の入試はできそう。
・やり方次第では、早稲田まで目指せる可能性がありそうだなと思いました。
基本方針
受験勉強で大切なことは、「何をやるか?」ではなく「何はやらないか?」を決めることです。
大学入試は同じ大学の学部でも、いろいろな受験方式があります。
さまざまな試験方式で受験できれば、合格するチャンスは増えるように見えます。
学部別の個別試験に加えて、英語4技能入試、共通テスト利用、統合型選抜、指定校推薦など…選択できるカードは、多い方が有利です。
しかし、それぞれのカードの数が弱いと勝てません。
だから、持っているカードの種類ではなく数字を最大化することに集中した方が合格は近づきます。
それに加えて、時間と能力が許すなら、親和性の高いものや整合性が取れるものは、手を広げたほうが得られるものは大きいです。
この生徒の場合、前述の大学ならどこでもいいと言っていました。
しかし、話を聞いていると早稲田の社会学部が一番いいのだろうなと感じたので、基本は個別入試一択だと思いました。
残された時間を考えると
1.共通テストの点数は、無理に取りにいかない。
→同じ大学なら共通テスト利用の方が、個別入試よりも難易度が上がるため。
2.模試を積極的には受けない。
→日曜など長時間勉強できる日は、まとめて勉強したほうが効率いいものに時間を割きたいため。
3.TEAPはやらない。=上智は受験候補に入れない。
→私立文系でMARCH以上を検討する場合、英検準1級は必須と言ってもいいです。
しかし、TEAPは他大学の汎用性・対策可能な時間・志望校とのバランスを考えると受検せず、TEAPを前提とした上智も志望校に入れないことを決めました。
4.英検対策は、夏以降やらない。
→MARCHが目標なら、英検にこだわってもメリットはあります。
しかし、早稲田を目標にする場合は、英検よりも個別入試対策をしたほうが、早稲田の他学部や他大学にも使える知識なのでメリットは大きいです。
5.指定校推薦は、本気で取りにいかない。
→指定校推薦はそもそも期待値が低い制度です。
結果として取れるならいいですが、定期テスト対策に勉強時間を大幅に割くなど指定校推薦にエネルギーを使うのはオススメできません。
以上、5点のやらないことを決めました。
3月~6月
大学受験講座は、サービスの性質上、体験授業がありません。
ただ、教室内の雰囲気や映像授業の内容などを試すために、自分の教材をつかって塾を利用することができます。
とくに初回面談時に授業動画の内容を心配している様子だったので、まずは塾のパソコンで動画を見ながら勉強してもらいました。
初回面談の印象で、自分から質問できないタイプの生徒だと思ったので、こまめに声をかけました。
しかし、何度声をかけても「大丈夫です。」「わかります。」という回答だったので、自分のペースでやりたいタイプかとおもい、本人に任せていたら…これが完全に裏目。
家に帰ってから、「いつ帰っていいのかわからない。」「休憩をとっていいのかもわからない。」「ずっとパソコンの画面を近くで見ていたから気持ち悪い。」と大泣きしているとお母さまから連絡がありました。
初回で緊張していることに加えて、男性とコミュニケーションを取ることも苦手だったようで、ずっと我慢していたようです。
まずは、少し時間をかけて環境や人に慣らして、徐々に塾にこられる曜日や時間を増やしていくことを提案しました。
また最寄りが篠崎なこともあり、毎日塾に来るのも大変かなとお母さまは心配していたので、塾にこられない日は、オンライン自習室の利用をすすめました。
状況を聞く限り、もう会うことはないのだろうと思っていると、翌日にお母さまから連絡がありました。
夕方から勉強に来ることと、オンラインではなく塾に行って毎日勉強すると本人は話しているとのことでした。
この決断は、うれしかったです。
成績が伸びる生徒に必要な要素に
・自分でやると決める。
・他人のアドバイスを聞ける。
理想は両方、悪くてもどちらかがあれば現状よりも伸ばすことができます。
泣き崩れるほど嫌な状況から、自分でやるしかないと覚悟を決めたのか?
親に言われてやることに決めたのか?
どちらかわかりませんが、少なくとも「自分で決めた覚悟」か「人から言われたから、やってみる素直さ」のどちらかの要素はあるのだろうなと思いました。
まずは、春休みに1日10時間勉強できる体力をつけるべく学習計画を立てました。
春休みまでに平日は電車で暗記をする時間を入れて7.5時間、土日は10時間勉強できるようにしたかったのですが…。
現実は、土曜は塾が営業していて学校が終わる時間が早いので、9時間程度勉強するものの、平日は4~7時間、塾が営業していない日曜にいたっては3時間と目標には大きく届きませんでした。
当然、春休みも10時間勉強する日は一日もなく、4日に1回は勉強時間1時間程度と小学生みたいな勉強時間の日もありました。
しかし勉強時間は少なくても、勉強の質の面で4つの長所がありました。
一つ目が、勉強に対する姿勢です。
「どの状態になっていれば、身についている状態か?」「なにを達成すればゴールなのか?」という意識を持って取り組むので、勉強した内容はしっかりと吸収していました。
二つ目は、つまらない誤魔化しをしないところです。
たとえば、予定の範囲の勉強が終わっていないのに、確認テストをしても時間の無駄です。
だから、やっていないならやっていないと話してくれた方が、やれなかった原因究明や次への対策につなげられるので生産的です。
「これは終わっていないからできない。」と伝えてくれるのは、学習計画を作るのにはプラスでした。
もちろん確認テストの日までに、しっかりと勉強内容を終えていれば、違った未来があったのは間違いありません。
三つ目が、没頭できるものがあることです。
オタク気質と同義です。好きなものをとことん突き詰める生徒でした。
受験科目では世界史が好きで、どの科目よりも一生懸命勉強していました。
気持ちがのらないときは、世界史を勉強して勉強のリズムを作っている様子もありました。
放っておくと、世界史しか勉強しないので、止めたこともありました。
四つ目が、抽象化・一般化する力を持っていたことです。
読解力と同じ意味です。
テキスト内容の理解してほしい知識を、読み取る能力が高かったです。
その能力にあぐらをかいたせいで、英語や現代文を構造からとる能力を鍛えずに、中高を過ごしてしまったのですが…。
本格的に勉強をはじめてからは、教材ごとに身につけたい能力を、こちらの意図通りに身につけている感じはありました。
だからGW前の段階で、勉強時間が変わらなくてもMARCHレベルなら合格を取れる目途はたっていました。
3、4月の定着度を確認するために、5月に東進全国有名国私立模試を受けました。
結果は、偏差値90.0で受験者1位。
メインで勉強した語彙・文法の範囲の基本的な問題で、いくつか間違えていましたが、結果だけを見ると十分すぎる結果でした。
6月。帰宅時間を早くしたことがよかったのか?
1日の勉強時間が10時間を超える日が出てくるようになり、平日の勉強時間もコンスタントに6時間に届くようになってきました。しかし、徐々に塾に来る時間が遅くなったので、勉強時間のトータルは4,5月に比べて減りました。
7月~11月
勉強の様子
7月。模試や過去問など客観的な指標になる成績は、順調でした。
しかし、早稲田合格のためには、勉強時間や勉強方法の負荷を上げる必要があると思っていました。
・希望する大学のどこかには合格できそうなので、本人のペースに合わせて、無理なく進めるべきなのか?
・早稲田の社会学部を本気で取りに行くために、今以上に負荷をかけるべきなのか?
本人に聞いても、はっきりとした回答は得られませんでした。
現状をお母さまに報告して、家での様子を聞くと、まだ体調面が完全ではなく辛そうとのことでした。
現状を踏まえた勝敗ラインを共有するために三者面談をしました。
すると、お母さまが「ここが勝負だから。別にどこの大学でもいいけど、いまのままだと早稲田はないみたいだよ。それでもいいの??」と。
「えっ?そういう感じ??電話で話した感じとちがくない??」と思い生徒を見ると…。
生徒は「うん。わかった。」と。
「えぇっ??毎週のように話していたよね?親の一喝で覚悟決まるの???」と自分の技量と生徒との信頼関係構築の拙さを思い知りました。
この面談をきっかけに、徐々に本人のキャラクターがわかり始めてきました。
「もう逃げられない」と観念すると状況を受け入れるようです。
面談で親にも塾にも状況を把握された以上、夏はやるしかないなとなったのか?
7月の下旬から勉強時間は、連日10時間を越えるようになり、8月中旬の集中特訓以降は、12時間を超える日も出てきました。
夏までにMARCHの過去問に入れるくらいの学力が目標だったのが、夏が終わるころには、MARCHなら合格ラインをぎりぎり超えるまでに成長していました。
そこで8月中旬に、早稲田大学文化構想学部の過去問を行いました。
この段階では、得点率よりも早慶とMARCHの質の違いを理解することが目的です。
早慶の問題は、他の私大とは質が大きく異なります。
基本的な勉強をしっかりすれば、初めてでも日東駒専レベルは8割以上取れます。
そのままMARCHレベルを解いても、6割程度は取れます。
しかし早慶になると今までの勉強では全く対応できないことがわかります。
英語の長文は日本語訳を読んでも、抽象度が高くて理解できない。
文法問題も解答を見れば知っている知識でも、問題を解いているときは気付けない。
そもそも内容がわかったとしても、文章量も問題数も多くて終わらない。
早慶に合格するには、多くの知識に加えて、教養、思考力、事務処理能力など総合力が、他大学に比べて必要です。
一朝一夕に身につくものではなく、今まで以上の高い意識や行動が求められます。
このことを理解するには、MARCHレベルで得点が取れるようになることが必要です。
最初に早慶とMARCHを比べても、見極める力がないので、どちらも難しいという感想で終わってしまいます。
秋以降の勉強を考えると、夏にMARCHと早慶の違いに気づけたのはよかったです。
9月、指定校推薦が決まる時期です。
指定校推薦の枠は、第一希望の早稲田の社会学部はなく、第二希望の文化構想学部はありました。
ただ初回の面談のときから「指定校推薦は本気で取りにいかない」と決めていました。
理由は、
・高2、高3で定期テストの勉強で、アップアップになっている学力層が早慶レベルの指定校推薦なんか取れない。
・基準が不明確で、自分がいい点数を取れば報われるものではないし、その頑張りが他の入試形態に活きない。
・出願から合否が判明するまでの期間、メンタルが保てず勉強の時間や質が大きく下がる。
・たとえば早稲田の指定校推薦の枠は、該当学部に3年間進学者がいないと枠がなくなるようです。そのため指定校の枠を学校のひとつの魅力にしているような高校の場合、成績状況関係なく指定校推薦を積極的に勧める進路指導をする高校もあるようです。
結果、競争は激化して、指定校推薦の出願基準をクリアした程度では推薦が取れないことが多いです。今回のケースでは、学年順位がかなり上位にいたので、指定校推薦の希望を出すことに反対ではありませんでした。しかし、学年全体的に評定がかなり高いようだったので、あまり期待できない状況でした。
以上の理由から、受験勉強ベースで実力をつけて、受験科目以外の科目は試験直前にしか勉強時間を取りませんでした。
それでも試験結果は学年5位。
最終評定は、体育が5に上がらず平均評定は4.9のままでしたが、早稲田の文化構想学部に出願しました。
出願すると合格を期待します。不合格の可能性もあるから、個別入試の準備をしっかりしないとダメだと自分に言い聞かせても、心が期待してしまいます。
期待している分、不合格になるとがっかりします。
勉強に集中できなくなるので、個別入試の対策を本格化させていく大切な時期に、勉強時間も勉強内容もパフォーマンスが大きく落ちます。
この生徒も、本人は期待していないと言っていましたが…あきらかに期待していました。
結果は不合格。
7月190時間、8月260時間と増えてきた勉強時間は、一気に160時間にまで落ちました。
夏のペースが戻ってきたのは、10月の最終週からでした。
実は、これも面談がきっかけでした。
面談のテーマは、表向きは受験日程です。
裏テーマは、勝敗ラインの再設定でした。
・メンタルの回復重視で、状況を見ながら勉強量を調整していくソフトモード。
→この場合、どこかの大学に合格することが勝敗ラインになります。
・学力維持は最低限。あとはできる範囲でやっていくミディアムモード。
→早稲田は、ほぼ絶望。中央法学部以外のMARCHは取れる勉強量を確保する。
・状況よりもタスク完了が最優先、結果重視のハードモード。
→受験する大学は、全部取りに行くことが目標です。
お母様から事前に家での状況を聞くと、朝が起きられなくて学校に行くのも一苦労とのことで、心配している様子でした。
だから、ソフトモードかミディアムモードでのどちらかだろうなと思っていたら…。
面談がはじまると「もう指定校もないし卒業も決まっているのだから、学校行かないで朝から塾来て勉強したら?」とお母さまが…。
「ええ‼そういう感じ?学校休むにしても、時期的に早すぎない?超ハードモードじゃん‼」と思って、生徒の方を見ると、中学入学から皆勤だったらしく、学校を休むのは嫌だったようです。
家に帰ったら、ダラダラしないですぐに寝ることや、学校が終わったら、すぐに塾にきて勉強すると約束して面談は終わりました。
こうして夏同様、面談直後から勉強時間は増えていきました。
入試日程と選定理由
入試日程
日付 | 大学+学部 | 入試形式 |
1月13日 | 東洋大学国際学部、法政大学人間環境学部 | 共通テスト利用 |
2月3日 | 國學院大學観光まちづくり学部 | 個別 |
2月6日 | 立教大学社会学部 | 個別 |
2月7日 | 法政大学人間環境学部 | 個別 |
2月9日 | 中央大学法学部 | 6学部 |
2月11日 | 明治大学政治経済学部 | 個別 |
2月12日 | 早稲田大学文化構想学部 | 個別+英語4技能 |
2月17日 | 早稲田大学文学部 | 個別+英語4技能 |
2月18日 | 早稲田大学人間科学部 | 個別 |
2月19日 | 早稲田大学教育学部or青山学院経済学部 | 個別 |
2月21日 | 早稲田大学商学部 | 英語4技能 |
2月22日 | 早稲田大学社会学部 | 個別 |
選定理由
共通テスト利用
センター試験から共通テストに変わり、高得点を取るにはより多くの時間を共通テストの練習に割かなければいけなくなりました。
共通テスト利用のメリットは、
の2つです。
しかし、
個別入試で合格可能性がある程度高い状態で、わざわざ第一志望を対策する時間を削ってまで共通テストの対策をする時間はありませんでした。
出願すれば、合格できるかもしれないから、出願できるものは出願した方がいいという考え方もあります。
しかし、指定校推薦のときのように出願したら期待してしまうし、出願する以上は力を入れる場面ではないとわかっていても、力を入れてしまうのが受験生心理です。
だから出願先をしぼることで、
・生徒は余計なプレッシャーがかからないで済む。
・第一志望対策にかける時間を減らさないで済む。
・余計な費用もかけずに済む。
上記理由から最初は、東洋大学のみ出願する予定でした。
最初の入試で欲しいのは、喜びではなくて安心と経験です。
当日に多少失敗しても、合格できるレベルのところをしっかり取って、まずは安心感を持てれば共通テストは十分だと思っていました。
最終的には受験日程・学力・試験科目的に、法政大学も出願することになりました。
2月3日國學院、2月7日法政大学
國學院は、共通テストで大きく失敗したときの保険。
法政大学は、共通テスト利用で出願しているものの合格を取りにはいっていません。
だから、共通テストリサーチの結果次第で出願予定でした。
早稲田商学部、教育学部、人間科学部、文学部への出願
通学時間の問題はありますが、本人が大学で勉強したい内容を考えると人間科学部は合いそうだから受験した方がいいと夏くらいから提案していました。
その後、学校の三者面談で社会学部と文化構想学部以外も早稲田をドンドン受けてくれと言われたようです。
受験科目・試験日程・対策できる時間を考えると法学部、政治経済学部、国際教養学部は除外。
試験問題的には商学部、本人の勉強したい内容に重なる部分もあるので文学部や教育学部を入試日程に組み込みました。
試験方式
早稲田の文学部と文化構想学部の選抜方法は、
・英語、国語、世界史を大学が独自で作成した問題で受験する一般選抜。
・基準に達していれば、英語のテストを免除されて、大学独自問題の国語・世界史の点数だけで合否を判定する英語4技能テスト利用入試。
・地歴は共通テストの点数、英語と国語は大学独自の問題で合否を判定する共通テスト利用入試。
文化構想学部も文学部も3つの方式を併願できます。
ただ、日本史と世界史は大学共通テスト利用入試で適用されない科目なので、世界史受験の今回のケースでは受験できません。
だから、文化構想学部と文学部は一般選抜と英語4技能テスト利用方式で出願しました。
一方、商学部は
・英語・国語・世界史を大学が独自に作成した問題で合否を判定する地歴公民型。
・出願資格が英検準1級以上。英検1級だと5点加点される英語4技能テスト利用型。
この2つの試験方式があり、文学部や文化構想学部と違って併願ができないので、試験方式をどちらか選ばなければいけませんでした。
これだけ見たら、地歴公民型の一択です。
しかし、英語4技能入試の加点平均点は約1点。つまり5点の加点を持っているのは、受験生の5人に1人ということです。
英語4技能入試の受験者層を想像すると、
・英検1級を持っている受験生。
・英検準1級を持っているから出願した受験生。
・英検準1級を持っていて、国語・地歴のどちらか、または両方が得意な受験生。
この3つが受験者層の多くを占めるのかと思います。
まず英検準1級を持っているから出願しただけの受験生は、不合格になる層なので敵ではありません。
つぎに英検1級を持っている受験生は、合格が確定しそうに見えますが、英検の力=英語力ではありません。
英検1級を持っていても、本当の意味での英語力がないと、早稲田の独自問題は解けないので、5点の貯金は意味がなくなるはずです。
英検1級を持っていて、本当の意味で英語力があり国語や地歴ができる受験生は、それほどいないと思いました。
なぜなら英検1級を持っていて、その他の科目もできる受験者は、もっと他に受ける大学があるからです。
そうなると英検1級グループには、それほど敵になる受験生はいなそうです。
英検準1級をもっていて学力が高い層は、加点がなく募集人数も少ない英語4技能に出願する理由がないので、地歴公民型を受験する可能性が高い。
だから英検準1級取得者で、英語4技能型を出願する層は、英検準1級を持っているからワンチャンスあるのでは?と期待する層が、大部分を占める可能性が高いと思いました。
一方、地歴公民型の受験生は
・募集人数が多いから4技能よりはチャンスがありそうだと考えた準1級保持者。
・英検を持たない個別入試対策に特化した受験生。
などいろいろな受験生が混在して不透明です。
2つの入試方式を考えると、募集人数こそ多いものの、受験者が不透明な地歴公民型よりも、ある程度受験者層の想像がつく英語4技能型の方が、この生徒の特性を考えるとチャンスがありそうだと思いました。
2月19日の早稲田大学教育学部と青山学院経済学部のW出願
青山学院経済学部は、早い時期から受験校の候補に入っていました。
また、教育学部の過去問は見たこともない状態だったので、不安もあったのだと思います。
試験日程的にあまり本人はノリ気ではありませんでした。
そこで、受験料は確実に無駄になる学校が出るけどW出願。
もし2月18日の明治大学が合格していたら早稲田大学を受験、不合格なら青山学院を受験することにしました。
12月~2月
12月から本命の社会学部と文化構想学部に加えて、商学部・教育学部・文学部など追加で受験する学部の対策にも入りました。
どの学部も古い年度ではまずまずの点数は取れました。
この時期に過去問の点数が下がっていくと、落ち込む受験生が多いです。
ところが、塾ではまったく気にしている様子はありませんでした。
お母さまから話を聞くと、家ではいろいろ弱音を吐くようなので、本音を聞き出そうとアプローチを変えて聞くのですが…警戒心が強く、本音を迫っても愛想笑いでかわされていました。
年末年始には、共通テストの対策をしました。
過去問の結果は、世界史はコンスタントに9割前後取れているものの、英語・国語は7割~8割。
英語は、リスニングを聞いていると途中で飽きて集中力が続かない。
国語は、現代文に時間をかけると古文・漢文を解く時間が足らなくなり、古文・漢文に時間をかけると現代文の時間が足らなくなるとのことでした。
実は、東洋大学も法政大学も、共通テスト利用で合否判定に必要な科目は、英語・現代文・地歴。
つまり古文・漢文は必要ありません。
そこで現代文を納得いくまで解いて、時間が余ったら古文と漢文を解くようにアドバイスしました。
共通テストリサーチの結果は、法政・東洋ともにA判定のラインを大きくこえたので、國學院・法政の個別入試は出願しませんでした。
共通テスト以降は、直近の大学の最終調整をしながら、早稲田大学合格を目指して対策を続けました。
最後の一カ月の課題は、入試問題で得点できることと朝起きること。
とにかく朝が弱くて、5月以降は20時くらいに塾を出ていくのに、寝る時間が遅くて朝起きられないという生活が続いていました。
そこで運動不足も解消されるし、目も覚めるから、塾には電車ではなく自転車来るように提案しました。
いろいろ言い訳じみたことを言っていましたが、最終的には自転車で来るようになりました。
数日したら電動自転車に変わっていたので、運動不足解消という点では、「?」でしたが、午前中から勉強できるようになりました。
個別入試が本格的に始まっても、中央大学の入試会場にお弁当箱を忘れたからと、試験翌日の午前中にわざわざ会場に取りにいくなど定期的に無駄な時間をはさみつつ、2月12日の早稲田大学文化構想学部までは比較的順調に進みました。
模試の判定では最後まで早稲田はC判定。
過去問の結果も、はまれば受かるという状況でした。
問題の解き方、考え方、間違え方など全部悪くないものの、経験値不足による試験科目全体としての安定感が欠けていました。
2月17日~19日の早稲田の文学部・人間科学部・教育学部と続いた日の夜。
人間科学部と教育学部の問題を見ながら反省会をしていると、初めて余裕のない顔を塾でも出しました。
「あっ?やっと仮面がはがれた!出番か!!」と思ったのですが、すぐ付け直してしまいました。
この子は、外ではどこまでも頑張ってしまう子なのだなと。
これはこれで彼女の本音なのだろうから、その距離間で付き合えばいいかと思うようになりました。
1日挟んで残り2学部。商学部と本命の社会学部を残すのみとなりました。
商学部の日の夕方、お母さまから連絡がありました。
試験の休み時間や帰り道などで来る連絡が、とても後ろ向きだということでした。
直近の人間科学部、教育学部が、例年以上に問題が難しいと感じているところに、商学部も例年より難しくなっていて心が折れたようです。
入試の後は塾にきて、その日の試験問題で反省会をして知識の確認と翌日の受験校の最終確認をしてから家に帰り、翌日の入試に備える生活をしていました。
しかし、この日は、本人があまりにも落ち込んでいるようだったので、お母さまは「今日は塾よらずに帰ってきたら?」と話したようです。
だけど、本人は「塾に行く。」と言ったようです。
これは、燃えました‼絶対に明日は、後悔なく試験会場に行ってもらおう!と。
ティッシュを用意して待っていると…。
塾に来たときの表情は、いつも通りのように見えました。
ただ試験問題を見ると、心が折れたことがわかる問題用紙でした。
解答用紙にはすべて記入してきたようですが、問題用紙に解答にチェックすることを途中から放棄していました。
個人的には英検が得意なだけの英検1級取得者が不利になるので、問題が難しくなるのは、むしろいいことだと思っていました。
また問題用紙に解答を記入していた箇所の正答率も、それほど悪くありませんでしたし、できなかったと言っていた大問も難易度を考えると妥当な取れ高でした。
変な気休めを言ってもばれるので、思ったことをそのまま伝えて、翌日の社会学部の試験問題を復習して帰りました。
帰り際、「明日って塾に来た方がいいですか?」というので、「明日は最終日だし、友達と遊んで来たら?」というと過去イチの笑顔で「わかりました。」と言って出ていきました。
翌日の社会学部の試験が終わるころ、お母さまから電話がありました。
とても前向きな気持ちで試験に向かっていったとお礼を言われました。
だけど、あれは塾に来て元気が出たわけではなく、この日で全部終わることがうれしかっただけだと思います。
それから一週間、文化構想学部と文学部は不合格が判明。
まだ早稲田の合否は4学部残っていましたが、手続き日の関係で明治政治経済学部と中央法学部でどちらに進学するべきか迷っているようでした。
どちらにするか相談したいというので教室でまっていると…教室に入ってくるなり「早稲田の人間科学部受かっていました。早稲田行きます。」って…。
「所沢キャンパス通うの??遠いよ???朝は平気????」と聞くと、「はい。通います」と。
本人の興味のある分野としてはピッタリの学部だと思うので、これはこれで良かったなと思っていると…。
2日後「教育学部と商学部受かりました。」との連絡があり、その翌日には社会学部が不合格だったことと商学部に進学するとの連絡がありました。
やはり本キャンパスにある学部の方がいいようです。
もともと第一志望だった早稲田の社会学部や文化構想学部は合格できなかったので、落ち込んだりもするのかなと思っていたのですが…。
たぶんダメージないです。
マーケティングも面白そうだとか入学する前にやっておいた方がいいことあるかとか、すごく大学進学を楽しみにしているようでした。
大学に向けての勉強よりも、耳に穴があいて、髪の色が変わる方が早かったような気もしますが…。
こうして1年にわたる受験生活は終わりました。
成功の要因
本人の資質
本人の資質はたかく、記憶力や理解力はよかったです。
指導力だけでは一年足らずの勉強で早稲田に合格するのは難しいと思います。
本人の性格とストレスとの距離の取り方
夏や秋の面談後に勉強時間は増えました。
しかし、理論値では、もっと増えるはずでした。
これは、面談のときは「わかった」といっていたことを徐々に守らなくなったからです。
本当に成果を出そうと思ったら、現実を理想に近づけることが必要です。
けれども、理想を理解しても、自分で決めた量しかやりませんでした。
狙ったところに合格できる生徒は、講師が10を要求したら10やってくる生徒です。
しかし、この生徒は10を要求しても8しかやりません。
12を要求したら10になるかなと試しても8しかやりません。
6だしたら8やってくるかなと試したときは、6しかやりませんでした。
使える時間・生徒の学力を基に出している学習量なので、できない量ではないです。
もう少し諦めが悪かったら、社会学部の英語や文化構想学部の国語を安定的に取れるようになったと思います。
しかし、諦めずにやっていたら、最後まで持たなかったような気もします。
「もっとできるから、やってみろよ!」という歯がゆさは常にありましたが、継続可能なセルフコントロールがとてもうまかったです。
何をもって成功というかにもよりますが、早稲田大学に合格したことを成功というのであれば、必要な要素だったと思います。
中学受験と中高一貫カリキュラム
中学受験の経験と中高一貫カリキュラムで英・国の基本内容が終わっていたから1年弱でも間に合ったと思います。
高校受験組と中学受験組の大きな違いは、勉強の体力と経験値です。
高校受験は、公立高校なら地域のトップ校でも、地頭が良ければ中3の夏からでも間に合います。
だから、あまり勉強体力がなくても、瞬発力だけで合格できます。その後も定期テストがメインなので、瞬発力で乗り越えることが可能です。
一方、中学受験は標準で3年間。悪くても2年間くらいの勉強期間を経て中学生になっています。
この生徒の場合も、一般的な公立高校の生徒とは、勉強の経験値が圧倒的に違いました。
中高一貫カリキュラムのおかげで、世界史以外の基本的な内容は高2時点で全て終わっていました。
しっかりと理解も暗記もしていませんでしたが、ゼロからやるよりも基本学習に時間を大幅に短縮できました。
親の理解力、行動力、決断力
細かいことは言わず方向性だけ示して、手段は塾任せ。
なにより、決めた方針に一貫性があったのが非常に良かったです。
指導方針と指導内容に整合性が取れている分には、結果が良くても悪くても納得してくれていました。
塾側で伝えた内容を、ご自身で調べたり勉強したりしていたようです。
だから模試や過去問の数字に過剰に反応することなく、大局的に見られていましたし、受験日程の提案も納得してくれたのだと思います。
行動力も早くて、参考書学習がメインのため「来月から○○って教材を新規で始めるから買っておいてね。」とお願いすると3日以内には必ずありました。
全部の合否が出そろう前に、入学式用のスーツ買ったと聞いたときは、あまりの準備の早さに、もはやギャグかと思いました。
また受験期に、生徒が感情的になるのはある程度仕方ない部分があります。良くないのは、この状況を見て、保護者も一緒に感情的になること。
この状況になると、最終的に上手くいかないことが多いです。
非常に理性的に判断していると思いました。
話していると感性が優位に働いていると感じることもありましたが、最終的な判断は常に理性で決断されていました。
だから、一貫性を持った決断ができていたのだと思います。
まとめ
最後の入試だった早稲田社会学部の後にきた連絡は、「早稲田大学はやっぱ難しいですね」
与えられた期間で、やれることを本人なりに精一杯やったという達成感や充実感が伝わるメッセージでした。
当初掲げた目標には届かなったので100点の入試ではないのかもしれません。
ただ体験記やアンケートを読むと、それなりに満足はしてくれていそうですし、最初に思った景色と違っても、頑張って手に入れたものなら大切に扱うようです。
受験までの時間の使い方、出願方法、受験日程で、結果は大きく変わります。
過去の入試情報・模試結果などの数値の情報だけではなく、本人の性格・モチベーションなど数値に現れない情報を把握することも大学受験の成功には必要です。
東都ゼミナールの大学受験講座は、学習管理と映像授業のサービスをベースにしながら、状況によって個別指導・質問対応もできます。
数多くの似たサービスがあります。
しかしサービス内容は同じでも、提供するサービスの質が違うから、開講以来の全受講生の70%超が早慶上理に合格し、約90%がMARCHに合格しています。
一人では勉強がはかどらない。
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