「大学入試は一番大変な入試だから高校で付属に入れておいた方がいい?」や
「早慶付属高は高校受験の方が大変らしい。だったら高校受験では無理をさせず大学受験で頑張った方がいい??」
このような質問をされることがあります。
大学受験をする進学校か大学受験をしなくてもよい付属校かは高校を決めるための大きな要素です。
「今の子どもを見ていると大学入試は無理っぽいな…。なんとか付属に入れよう」と思いながら
「付属だと進路が決まるから、子どもの可能性をなくすことになるのではないか?」と悩む親
「大学入試が本番だから、高校入試では無理をさせない」と思いながら
「ここで頑張れないと大学入試でチャンスがなくなるのではないか?」と悩む親。
この記事では、高校受験と大学受験はどっちが大変なのか?について解説します。
高校受験のほうが偏差値が高いから大学受験より大変?
大学と高校では同じレベルの学校でも偏差値が違う
高校の偏差値の方が大学の偏差値よりも高いから高校受験のほうが難しいという人がいます。
たしかに大学受験の偏差値と高校受験の偏差値だと同じ学校でも大きく異なります。
たとえば日大の偏差値は37.5~67.5です。(参考:みんなの大学情報)
大学は学部ごとに難易度や人気に幅があるので、中堅校に近づくほど偏差値の幅が大きくなる傾向があります。
日大は大学受験だと偏差値50前後の学部が多いです。
一方、日大の付属高校である日大一高は偏差値61です。(参考:「みんなの高校情報」)
日大一高だけではなく、日大豊山や日大櫻丘など多くの日大の付属高校の偏差値は60前後です。(晶文社「2021高校受験案内」参照)
日大は大学受験だと偏差値50で進学できるけど高校受験だと偏差値60が必要だということです。
この偏差値の違いは日大だけの話ではありません。
明治大学は大学受験の偏差値は55~65なのに対して付属校の明大明治の偏差値は73です。
どこの大学も付属高校と偏差値を比べると、付属高校は大学よりも偏差値が10前後高いです。
この数字だけを比べると大学受験の方が簡単に見えます。
偏差値が違う理由
大学と付属高校の偏差値の違いは競争相手の違いから生じます。
大学受験と高校受験では競争相手が変わります。
まず高校受験での競争相手について説明します。
高校受験は中学受験をした子ども以外の同世代の競争です。
23区では中学受験をする人口は約20%です。
日本では、ほぼ全員が高校に進学するため高校受験は中学受験をしなかった同世代80%の競争ということになります。
小学生の時に勉強をしてきた学力上位20%のぬけた平均が偏差値50になります。
一方、日本では大学の進学率は約60%です。
競争相手は学力上位60%の同世代と浪人生も加わります。
その平均が偏差値50です。
そのモデルが下の図です。
50の基準が上がっているのがわかると思います。
【高校受験と大学受験の受験者イメージ】
これが大学受験と高校受験で学校の偏差値が異なる理由です。
高校受験では偏差値60が大学受験では偏差値50くらいの位置になっていますよね。
競争相手が異なるから偏差値が違うだけで合格するための学力は高校受験も大学受験もかわりません。
偏差値を比べて高校受験は大学受験より難しいから大変だというのは違います。
高校の募集人数が少ないから大学受験より高校受験は大変?
中高が開成、大学は東大出身の知り合いがいます。
彼は「東大は年間3000人も入れるけど、開成には300人しか入れない。だから開成に入る方が大変だ」と話していました。
募集人数は大学受験に比べると高校受験のほうが少ないです。
しかし合格者も高校受験の方が少ないため単純に人数だけの比較に意味はありません。
実際に比較すると開成は高校受験では522名受験して合格者185名。(参考:開成学園HP)
一方、東京大学は8683人受験して3083名の合格者を出しています。(参考:東京大学HP)
どちらも倍率は約2.8倍で同じ倍率でした。
倍率を比べると高校受験と大学受験ではほぼ同じなので、どちらが難しいとも言えません。
高校の勉強は難しいから高校受験よりも大学受験は大変?
大学受験のほうが勉強の範囲は広くて深いというのは間違いありません。
たとえば公立高校の入試問題は生物分野・化学分野・物理分野・地学分野を全部一つにして理科という1科目100点のテストを作ります。
一方大学受験では生物、化学、物理、地学それぞれの分野で100点分のテストが作成されます。(例外もたくさんあります)
これを比べるだけでも大学受験は勉強量が多くて大変だということがわかると思います。
しかし勉強が難しいから大学受験の方が大変というのは安易な考えです。
大学受験は高校3年間のことをしっかりと勉強すれば、どこの大学を受験するにしても合格に必要な知識を学ぶことができます。
たとえば世界史の教材で山川出版の世界史用語集があります。
この用語集は世界史で出てくる事件や人物の名称と説明が書かれています。
それ自体を読み進めることもできますが、問題集をやっていてわからない用語が出てきたときやテキストに出てきたけどもっと詳しい説明が欲しいというときにつかう世界史の辞書のような教材です。
この教材の優れているところは用語の先頭に出題頻度が書かれているところです。
だから調べた用語の重要度を判断できます。
大学のレベルが上がるほど出題頻度がとても低いところまで出題されます。
ただ、どこの学校を受験するにしても山川の用語集に掲載されていない問題は基本的に出題されません。
一方、高校受験は偏差値65を超える高校になると出題範囲が高校2年生の学習内容まで及びます。
どれだけ中学生用の教材で勉強を頑張っても解けない問題や知らない知識がたくさん出題されます。
中学と高校合わせて5年間で学習する内容を中学の3年間だけでマスターしなければ合格できません。
中学生のキャパシティーで高校生の学習内容を理解しなければいけないことを考えると大学受験よりも高校受験のほうが大変だといえます。
勉強の難しさの種類が違うので大学受験と高校受験では、どちらが大変かを比較することができません。
大学受験で成果を出せる子どものタイプ別診断
チェックリスト
各項目のYESとNOをつけて、それぞれの数をかぞえて下さい。
・塾に行かなくても中学校の成績が良い YES or NO
・自分で学習計画を立てて実行して成果を出せている YES or NO
・わからないことは調べたり聞いたりして自分で解決できる YES or NO
・学校のイベントや部活に積極的にかかわっても成績を維持できる YES or NO
・一度決めたことは最後まで実行できる YES or NO
・親子で進路や将来の話ができる YES or NO
・学校の予定など子どもが一人で把握して行動できる。 YES or NO
・忘れ物が少ない YES or NO
結果
YESの数が多いほど大学受験でも成果が出せる可能性が高いです。
あまりイエスがつかない場合、大学受験ではあまり良い結果を残せないかもしれません。
大学入試で結果が出せるかどうかはセルフコントロールができるかどうかです。
チェックリストにNOが多い場合、セルフコントロールが苦手な子どもです。
自分で行動のコントロールができないのに加えて高校生の子どもに親のコントロールはおよびません。
「勉強をしろ!」と言っても無駄です。
「部屋を片付けろ。」「風呂に入れ。」
そんなことすら親の言うことを聞きません。
おそらく多くの中学生の保護者が今でもそうだと感じるかもしれません。
しかし今、以上に聞きません。
大学受験での親の仕事は費用負担のみです
他人の話を聞くことも、自分で調べることも、計画することも、実行することもできないタイプの子どもが大学入試で成果を出せるわけがありません。
中学生であれば早いうちは親の話を聞く可能性があります。
進路のこと、勉強のこと、将来のことなど成長段階よっては話を聞いてくれる可能性があります。
子どものコントロールがきく中学生のうちに大学付属に入れてしまうのも選択肢の一つだと思います。
まとめ
高校入試と大学入試のどちらが大変かは入試問題の性質、受験者層、勉強の質の違いではなく子どものタイプによって決まります。
大学受験では主体性のある子どもが成果を残せます。
大学入試は同じ大学でも学部ごとに問題の傾向が違います。
すべての大学の学部ごとの特徴を把握するのはかなり難しいです。
自分で希望する大学の過去問を解いて必要なことを調べて、考えて、実行することが必要です。
高校受験では言われたことを素直に実行できる子どもが成果を残す傾向が強いです。
どちらの受験も主体性も素直さも必要なことは間違いないです。
ただ程度の問題として素直なだけで主体性のない子どもは大学受験では成果が出しづらく、高校受験の場合は中学生が過去問研究をして対策を考えるのは困難なので言われたことを粛々と進められる子どもが成果を出す傾向が強いということです。
また高校受験に向いている性格ではない。さらに大学入試にも向いている性格でない場合は高校受験で大学付属に入れた方が大きな失敗はないかなと卒業生のその後の進路を聞いていると感じることが多いです。